小高い丘の上に想像する理想の形 ねこの家ができるまで

ねこの家は三階建ての比較的大きな作りになっています。
それは、光のアートを実現するためでした。
最初のアトリエ構想には三階建ての建物はなく、丘の上に一つの建物を置き、丘の下にもう一つを作るものでした。
しかしこれでは、アートの空間に仕上げていくには広さが足りません。
理想の形にならないのです。
あとりの目指す理想は、丘の上にあって、光が室内に投射され、風がアトリエ全体を通るような建物を理想としていました。
そう、工房というただの小屋を作ることが目的ではないのです。
理想は光と風のアートを演出出来なければならなかったからです。
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それからでした。


今まで、あとりは建物を建てる方法にばかり目を向けていたため、全体としての建築像を持っていませんでした。
あくまでも基本の形で建物を建築するといった技術的な方法を探っていたからです。
土台となる基礎の作り方から、建物を建てる方法、木材の加工や加工工場との連携などを主に行ってきました。
そこにあるものは技術で建てられる建築物であって、芸術的な要素は含まれていませんでした。
そのことに気がいたあとりは、アート性の感じられる建物を見て回ることにしました。

様々な場所や土地にある家といわれる建物を見に行きました。

代表的なものは、断崖絶壁にある宙に浮かぶ家や吊り橋でつながれたツリーハウスのような建物、木の中からリスのように昇っていく不思議な建物であったり、ウッドデッキで結ばれた通路にある森の小さな家群など。
それまでアートと見ず、建築物として扱っていた建物があとりの目にはとってとても新鮮に映ったそうです。
あとりの中のアート性は、多くの想像に満ち溢れれました。
想像の中でしかなかった作りかけのアトリエは、徐々に形になっていきました。
現実と想像から、真の理想を組み立てる準備が始まりました。
自らの想像物を現実に反映させていくためには、どんな方法があり、どんな技術や知識が必要なのかを生理整頓していきました。
現在の「ねこの家」ができるまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。
それは同時に、決して妥協することのない芸術作品を完成させべく決断した、一人の芸術家の途方もない大きな作品作りの始まりを意味していました。
『第七話』

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